配信中 Piano Distance ― 中村浩之
一台のピアノを、その縁で聴く。音が立ち上がる瞬間、消えていく場所、そして、その両方を抱きとめる空間。
音と、その音が渡っていく部屋との、あいだで録音された。
ジャケット
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断章
Piano Distance は、音の縁で起こることに耳を澄ます ― ピアノの音が立ち上がる瞬間、長くゆるやかに消えていく斜面、そしてその両方を抱きとめる空間に。
武満徹のあとに、距離の問いを
武満徹の問いを、もう一度。
タイトルは武満徹の1961年のピアノ曲からの引用 ― ピアノと聴き手、音と沈黙の「距離」を問い続けた作曲家への敬意。本作はその問いを、バイノーラル録音と自作の空間音響システムで、もう一度取り上げる。
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タイトルは、武満徹の1961年のピアノ独奏曲『ピアノ・ディスタンス』からの意図的な引用 ― 生涯を通じてピアノと聴き手の、奏者と部屋の、音と沈黙の、その距離を問い続けた作曲家への敬意として。本作はその問いを、バイノーラル録音と自作の空間音響システムという手段、そしていまの時代固有の切迫感をもって、もう一度取り上げる試みである。極端で声の大きいものを優先する情報環境のなかで、もっと遅い注意の向け方は、まだ可能だろうか。
トラックリスト
下記は各曲30秒の試聴です。01曲目は Bandcamp で全編フル試聴可能。ヘッドフォン推奨。
- 01 Subglacial Trace 6:39
ノート
表層の下のゆるやかな圧力 ― 低い共鳴、近い空気、形が生まれる前の深さの感覚。
- 02 Meltwater Stillness 3:5530秒試聴
ノート
液体の静寂 ― 漂うかのように宙づりにされた音色、互いに折り重なる反射。
- 03 Between Vanishing Notes 6:4230秒試聴
ノート
アルバムの核心となるジェスチャー ― 減衰を構造として、沈黙を測定可能な距離として。
- 04 White Flash in Still Air 3:5930秒試聴
ノート
一瞬のまぶしさと鋭さ ― 明るいトランジェント、突然の近接、そして後退。
- 05 Folded Hours in Frost 6:4230秒試聴
ノート
時間が内側に折れる ― 記憶のように感じられる反復、薄い冷気の層の下に保たれて。
- 06 Pale Modes Adrift 5:3030秒試聴
ノート
モードの漂流と浮遊 ― 方向感覚が緩みながらも、決して溶け去ることはない。
- 07 Remote Ritual of Light 6:4230秒試聴
ノート
遠い儀式 ― まばらな音像、鐘のようなハーモニクス、遠方のぬくもりのオーラ。
- 08 Residual Echoes of Ice 4:4430秒試聴
ノート
残像 ― 音源が消えた後に残るもの。空間を最後のカデンツとして。
Total44:53
ミュージック・ビデオ
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02 Meltwater Stillness
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04 White Flash in Still Air
断章
Our hearing is older than clarity — tied to the instinct to detect where something is, how close, how safe.
The work can feel tender and uneasy at once; a bright figure arrives too close, a resonance recedes until it becomes the room.
つくり方について
スピーカーは2台。あとは、部屋が引き受ける。
聴覚は、明瞭さよりも古い ― なにかが「どこに」「どれくらい近く」「どれくらい安全か」を察する本能と結びついている。本作は、その古い聴覚に耳を澄ますことで書かれた。一台のピアノが、聴き手の背後から、頭上から、部屋の内側から立ち現れる。サラウンドの装置も、スピーカー・アレイも要らない ― ただ、二つのスピーカーの小さな文法と、音が空間に入っていくその仕方だけがある。
ライブ・Distant Echo
『Piano Distance』を、一室の空間に立ち上げる。
2025 · Tokyo 『Distant Echo』は『Piano Distance』の世界観を、サイトスペシフィックなインスタレーション・コンサートとして展開した形態 ― アルバムの「距離」「減衰」「音と音のあいだ」を一室の空間に立ち上げる。2025年に木場 Earth+ Gallery(東京)にて初演。
聴衆の位置と動きが作品のミックスの一部となり、同じ空間音響システムはヘッドフォン外、サラウンド機材なしの2スピーカーだけで成立する。ライブピアノと、紙・箔を用いたビジュアル(能登真理亜)の融合。
Stage
Audience
Maria Noto · paper
Piano · live
Resonance
Foil
Quiet 批評コンテクスト ― 『Distant Echo』(東京・2025)評
「非常に緻密で構築的…時間の解像度が高い。」
「スピーカーを使ったバイノーラルのような感じ。」
― 高山博氏、『Distant Echo』(東京・2025)について書かれた評より。
念のため、これは2025年のインスタレーション公演についての批評からの引用で、アルバム『Piano Distance』そのものへの評ではありません。
アーティスト
Tokyo / Kawasaki 中村浩之 ― 音を「空間」として扱う作曲家・ピアニスト。
中村浩之は、東京・川崎を拠点に活動する作曲家・ピアニスト。音を「空間」として扱い ― 音が渡っていく場所をどう抱えるか、ひとつの音と聴き手の距離 ― を主題に、録音作品・サイトスペシフィックなインスタレーション・パフォーマンスを横断する。
ピアニストとして出発し、作曲のための空間音響システムを自ら構築。その空間音響はロンドンのアート・コレクティブ Random International『Alone Together』(Superblue Miami / Riyadh Art)で用いられ、英国の劇場制作『DEEP FAKE — Ghost in the Machine』(Arts Council England 採択/振付 Rosie Kay/2026年 Birmingham Repertory Theatre)の核を成す。国立台南大学(台湾)および ESP エンタテインメント東京で講師を務める。
作品に『Piano Distance』(Fluid Audio, UK / Beyond Boundary Music, 2026)、『千の集い』(Dragon's Eye, 2024)、『Look Up at the Stars』(Youngbloods, 2023)ほか。
関連する文脈
Random International ― Superblue DEEP FAKE ― Arts Council England 多摩美術大学、アピチャッポン・ウィーラセタクン招聘講義(講師として参加)